離婚のときに決めること


離婚をするにあたって,
 未成年の子どもの親権者
 養育費の金額と期間
 財産分与
 慰謝料
を決めなければなりません。
深く考えずに「債権債務なし」の約束をしてしまうと,後から何も請求できなくなることがあります。
以下では,これらのことについて説明します。


親権者

離婚をするときに未成年の子どもがいるときには,どちらが親権者となるのかを決めなければなりません(民法819条)。
養育費,財産分与,慰謝料は後回しにもできますが,親権だけは必ず決めないと離婚できません。
どちらも親権者になりたいと主張した場合,争いは激しくなります。
すでに別居していて,どちらか片方が育てている場合は,現に育てているほうが圧倒的に有利です。
強引に片方の親が子どもを連れ去ったという相談も受けますが,たとえ連れ去りが強引であっても,片方の親が子どもを育てている期間が長くなると,連れ去った親が有利になります。
子どもを連れ去られた場合,できるだけ早く手を打つことが必要になります。

養育費

子どもを育てる側が養育費を請求できます。
養育費の取り決めは後回しにできますが,できれば離婚と一緒に決めたほうがよいとは思います。
話し合いで養育費の金額を決めるので,請求されたほうが払うといえば,いくらもらってもいいですし,逆に子どもを育てるほうが養育費はいらないといえば,そのとおりになることもあります。
そうはいっても,「相場」というものがあり,2人の親の収入の比較で決まる一覧表というものがあります。
お互いが自分の主張を譲らない場合には,裁判所が養育費の金額を決めますが,この一覧表を参考にすることが多いです。
ですから,養育費を請求された側に収入がまったくなかったり,子どもを育てる側のほうがずっと収入が多かったりすると,養育費が認められない場合もあります。

なお,養育費は子どもの権利ですので,子どもを育てる親が勝手に放棄できるものではないです。


財産分与

財産分与も後回しにできますが,離婚してから2年以上が経ってしまうと財産分与の請求はできなくなってしまいます(民法768条2項)。
ですから,離婚を急ぐ事情がないのであれば,離婚と一緒に決めたほうがよいです。


2分の1ルール

何か特殊な事情でもない限り,「結婚してから増えた財産の2分の1ずつを分け合う」というルールが定着しています。

そのため,夫がだらしなくて仕事を全然せず,妻ばかりが働いた場合に,「2分の1ずつ分け合うのはおかしい」と言われることがあります。
その気持ちは分かるのですが,現状では,よほどのことがない限り2分の1ずつ分け合うということになると思います。

裁判所(国家)が,お互いの働き具合を数字で評価するということは,やらないほうがいいからです。
そういうわけで,財産を2分の1ずつ分け合うのは仕方がないとあきらめて下さい。

 

財産分与の基準時

財産の金額は日々変動するものですが,財産分与は別居時の財産を基準として分け合うという考えが主流です。

ですから,別居後に財産が減ったとしても,あるものとして分け合います。
離婚成立時という考え方もありますが,そうすると財産を管理している側が,財産を隠したり,処分してしまったりするかもしれません。

別居してから離婚が成立するまでの間に,夫婦の一方が勝手に預貯金をおろしたり,保険を解約することがよくあります。

そういう場合には,やはり財産分与で調整したほうが公平だと思いますので,別居時で考えるのがよいと思います。

 

慰謝料

慰謝料も,その場で決めなくても離婚はできますが,できれば離婚の時に一緒に決めたほうがよいです。
とはいっても,すべての離婚の場合に慰謝料が発生するわけではありません。
夫婦なので,相手の言動で精神的苦痛を受けるということはあるのが普通だろうと思います。
(そうでない夫婦も存在するかもしれませんが・・・)

「慰謝料を請求できますか?」という相談を受けることが多いですが,私は,夫婦で慰謝料の原因になりうるのは,暴力や不貞(浮気)くらいだと答えています。
姑から執拗にいびられたとか,相手が特殊な性癖をもっていたとかいうことで,慰謝料が認められることもあります。

ですが,性格が合わないとか,嫌な思いをしたとか,そういうことでは普通は慰謝料は認められないものだと思って下さい。

慰謝料が認められるとして,次に金額の相場ですが,これは事案によると言わざるを得ません。

経験上は,訴訟では300万円を請求することが多いという感じです。

ですが,慰謝料が認められたとしても,300万円よりも低い金額が認められることが多いです。

慰謝料がいつまで請求できるかというのも,けっこう質問されます。
3年間で消滅時効にかかるのですが,「いつから3年間」なのかが問題になります。
これは個別に判断が分かれますので,気になる方はご相談下さい。


「債権債務なし」の条項について

離婚の過程で合意の書面を作ることがあります。
そこで,「債権債務がないことを相互に確認する」というような条項をつけてしまうと,その書面に書かれた以外の金銭は一切請求できなくなってしまう場合があります。
合意を書面にする場合は,協議離婚であれ,調停離婚であれ,和解離婚であれ,本当に不利益にならないかどうか弁護士に見てもらった方がいいと思います。