民事訴訟の流れ


1 訴訟提起の準備

訴訟を起こすためには,さまざまな準備が必要です。
相談を受けてから,証拠を集め,勝訴の見込みがあるかどうか検討します。
この検討には時間がかかりますし,勝訴の見込みを判断するのはひじょうに難しいことです。


2 訴状の提出

訴訟を起こすということは,具体的には,訴状を裁判所に提出するということになります。
訴状を裁判所に提出すると,裁判所で形式面のチェックをします。
形式面を整えるために,多少の時間を要することがあります。


3 第1回期日の指定

原告(訴える側)の都合を聞いた上で,第1回目の期日を決めます。
弁護士に依頼した場合,原告本人も出席すべきかどうかは事案によりますが,第1回目の期日には弁護士だけで行くことが多いです。

 

4 訴状の送達

原告が出した訴状を被告が受け取ってはじめて,訴訟が始まったということができます。
訴訟がかかっていることを「係属」といいます。

訴状を被告に届けることを「送達」といいます。
送達は,まずは郵便で行います。
被告が受け取らなかったり,住所地にいない場合など,送達がスムーズに行かないこともあります。

送達ができないからといって,いつまでも訴訟が始まらないというわけではありません。
被告が訴状を受け取らない場合や行方不明の場合でも,判決を得ることはできます。
ただし,そのためには,被告が住んでいそうな場所に行って,調査を行わなければなりません。
この調査に時間がかかることもあります。


5 答弁書の提出

訴訟を起こされた側を「被告」といいます。

被告は,第1回期日より前に答弁書を提出しなければなりません。
答弁書を出さず,第1回期日に欠席した場合には,すぐに敗訴するおそれがあります(欠席判決)。

第1回期日は被告の都合を聞かずに決められますが,答弁書を提出しておけば第1回期日は欠席しても大丈夫です。
第1回期日の直前に弁護士にご相談される方もいらっしゃいますが,なるべく早めにご相談下さい。


6 第1回口頭弁論期日

裁判官が「原告は訴状を陳述しますか。」と尋ね,原告(代理人弁護士)が「陳述します。」と答えることがほとんどです。
何をしているかというと,「口頭弁論期日」というくらいですので,「口頭弁論」をしているのです。
本来なら訴状を全文朗読するのが建前なのですが,それは時間がかかりますし,裁判官は当然前もって訴状をきちんと読んでいるはずです。

ですから,「訴状を陳述します。」と言えば,訴状に書いてある内容を口頭弁論期日できちんと弁論したということになるのです。

被告が出頭している場合は,やはり被告が前もって提出しておいた答弁書を「陳述します。」と言うことになります。
欠席している場合には,答弁書を前もって提出しておけば,陳述したことになります。
陳述擬制といいます。

原告が訴状を陳述し,被告が答弁書を陳述した後,場合によっては前もってコピー(写し)を提出しておいた書証を取り調べることもあります。
「取調べ」といっても,提出済みのコピーと原本を見比べて,原本に間違いないかどうかを確認するだけです。
書証の取調べを第1回期日でやる裁判官もいれば,後の期日でまとめてやる裁判官もいます。

その後,次回までにやること(書面に対する反論,証拠の提出など)を決め,次回期日を定めます。
次回期日を決めるには,出席した当事者の都合を聞いてくれます。
次回期日までの間隔は,約1か月であることが多いです。

こうして第1回期日が終わりますが,10分もかからないで終わるのがほとんどです。
緊張して訴訟に臨んだ当事者からすると,拍子抜けするかもしれません。


7 弁論期日・弁論準備期日

以下,期日が何度か続き,争点を絞っていきます。
期日で自分の主張をするときには,あらかじめ「準備書面」という書面を提出することになります。
原告が準備書面を出し,被告がそれに対する反論の準備書面を出し・・・というかたちで何回かの期日を開きます。

 「弁論期日」だったり「弁論準備手続期日」だったりしますが,この違いはあまり気にしなくてよいと思います。


8 証拠調べ期日

争点が絞られ,書証もあらかた提出されると,証人尋問と本人尋問が行われます。
証人尋問とは,原告・被告以外の第三者の尋問です。
本人尋問とは,原告と被告が自ら尋問を受けることです。
まとめて人証と言ったりします。
ちなみに,たんに「証拠調べ」と言ったときには,証人尋問や本人尋問の意味で使われていることが多いです。
ここに至るまでに,書証を取り調べているケースが多いのですが,この段階になって突然「証拠調べを行いますか?」と裁判官から言われ,パニックになってしまう方もいるようです。

証人尋問や本人尋問は,訴訟の最終盤で行われるものと理解して下さい。


9 和解の試み

当事者にその気があれば,和解はいつでもすることができます。
「和解」という言葉は,「仲直りをする」という意味で使うのが日常の用法ですが,相手を許せなくても,何らかの解決をして訴訟を終わらせることが「訴訟上の和解」です。
訴訟をいったん起こしてしまうと和解はできないと勘違いする方もいらっしゃいますが,双方が納得すれば和解はできます。
極端な話,判決が出た後に和解することも可能です。
とはいえ,尋問(証拠調べ)の前後に和解の話をすることが多いように思います。

 

10 最終準備書面

尋問が終わった後,自分の主張を最後に述べるため,最終準備書面を提出することもあります。
ちなみに,「最終準備書面」というタイトルではなく,「第●準備書面」として提出します。
「最終準備書面」を出した後に,また書面を出すこともありますので・・・
最近は,最終準備書面は出さないで判決,ということも多いです。

 

11 判決の言渡し

判決は法廷で言い渡されますが,民事事件の場合,当事者が判決を聞きに行かないことがほとんどです。
判決の内容は,その後に受け取る判決書で確認することができます。

 

12 判決後はどうなるか

相手方にお金を払ってもらう内容の判決であれば,まずは任意に支払ってもらうことを相手方に要請します。
判決が出るまでは争うが,判決が出たら,たとえ自分に不利な判決でも従う,という人はいるものです。
自分に有利な判決が出たが,相手方が任意に支払わなければ強制執行をすることになります。
判決に不服であれば,判決を受け取ってから2週間以内に控訴をします。

 

13 弁護士からの説明

以上がおおまかな流れですが,すべてのことがらについて依頼者に報告するわけではありません。
あまりに細かなことは報告せず,報告すべきことがらをこちらで選択して報告しています。

 民事事件は,大体1か月に1回のペースで期日があり,その間は特に動きがありませんので,報告をするのは多くとも1か月に1回になります。
依頼された方からすると不安になるかもしれませんが,どうしてもそうなってしまいます。
自分の事件がどうなっているのか気になったら,進捗確認のご連絡を下さい。