自己破産について


自己破産の一般的な流れを大雑把に解説します。
自己破産は弁護士に依頼しなくてもできますが,ここでは弁護士に依頼した場合の流れを説明いたします。

 

受任

釧路では,法テラスを利用できる方がとても多いのですが,この場合は弁護士費用が安く,分割にできます。
事件終了時に生活保護を受けている方などは弁護士費用の免除を受けられることもありますので,お尋ね下さい。

 

弁護士が破産を受任すると,債権者に対して,「受任通知」という手紙を発送します。
この受任通知を発送した後に,借金を支払うことはできませんので,ご注意下さい。
受任通知を受け取ると,貸金業者は弁護士としか接触をしてはならなくなります。
この規制は,銀行や個人には及びませんが,たいていの債権者は弁護士に連絡をしますので,ご本人はかなり楽になるようです。


債務の調査・申立ての準備

受任通知を出して2~3か月後くらいには,債務の調査が終わります。
これと並行して,ご本人には必要な資料(けっこうたくさんあります。)を準備してもらい,家計簿も付けてもらいます。
債務の調査が終わったら,その借金の使い途や,破産に至る事情を調べるため,打ち合わせをします。
この過程で,ご本人の知らない財産が出てきたり,破産しづらい事情が明らかになることもあります。


自己破産の申立て

ご本人との打ち合わせが終わり,破産申立書を完成させたら,裁判所に提出します。
この提出は弁護士が行い,これが「申立て」ということです。

破産申立書を出せるまでにどれくらいかかるかというと,

とくに急ぐ事情がなければ3~4か月くらいです。

債権者に財産を差し押さえられそうだという方はもっと早く申し立てますし,複雑な事情がある方の場合は,もっと時間がかかります。


破産申立書を出すと,裁判所から質問を受けたり,追加資料の提出を求められたりします。


同時廃止か管財事件か

ご本人にこれといった財産がなく,特に問題がなければ,破産の手続は簡単なものとなります。
これを「同時廃止」といいます。

これに対し,財産があったり,ギャンブル,クレジット枠の現金化,浪費などの問題がある場合には「管財事件」となることがあります。
管財事件になると,裁判所が「破産管財人」という別の弁護士を選任します。
この「破産管財人」は,破産の申立てをした人を免責(借金を返済しなくてもよい)にするかどうかの意見を述べる人です。
だからというわけでもないですが,破産管財人にはきちんと協力して下さい。

郵便物も,破産手続が始まってから第1回目の債権者集会までは,破産管財人のところに転送されます。
郵便物は後で渡してもらえますが,中身は確認されますので,ご了承下さい。

管財事件になると,弁護士費用が高くなり,予納金(裁判所に納めるお金)も最低20万円は必要になります。

生活保護の場合は法テラスが予納金を立て替えてくれるのですが,それ以外の方は破産予納金を自分で用意しなければなりません。

この破産予納金を用意するのに時間がかかる場合があります。


債権者集会(管財事件のみ)

管財事件になった場合は,申し立ててから2~3か月後くらいに「債権者集会」が開かれます。
債権者集会とはいっても,債権者が金融機関や貸金業者だけであれば何事もなく終わるのが普通です。
ですが,個人からお金を借りたり,何か問題があるときには債権者集会が荒れることもあります。

もっとも,私自身は,まだ怒号がとびかって収集がつかなくなるような債権者集会は経験したことがありません。


免責手続

同時廃止であっても管財事件であっても,個人が破産を申し立てた場合には,同時に「免責」を申し立てます。
一般的には,「破産=借金を返さなくてよい」ですが,厳密にはそうではありません。
破産をして,なおかつ,「免責」の許可を得なければ,「借金を返さなくてよい」とはならないのです。
ほとんどの場合は,破産が認められれば免責も認められます。

私も,破産を申し立てて,免責が認められなかったことはまだありません。

免責を得るために,「免責審尋」というものが開かれる場合があります。
「審尋」というのは,「面談」「面接」のようなものだと理解して下さい。
釧路地裁では,免責審尋は同じように破産する人の集団で行われ,私は同行していません。
個人への質問はないことが普通ですが,もし質問をされたときには正直に答えて下さい。

破産法252条には免責が認められない場合(「免責不許可事由」といいます)が書かれています。
条文の解釈としては難しいところもあるので,触れはしませんが,形式的には免責できない場合に該当しても,免責が認められる場合もあります。
ただ,どうやっても免責を得るのは難しそうな場合には,破産をやめて個人再生を申し立てる場合もあります。
個人再生には,破産と違って,免責不許可という制度はないからです。


自己破産後の法律関係

破産をして,免責が許可されると,裁判所から決定書が出されます。
債権者は,破産手続が終わったことや免責許可の決定が出たことを知らないことが多いので,こちらから決定書のコピーを送ります。
コピーの送付は,しなくてはならないということではないですが,したほうが面倒くさくないと思います。
決定書のコピーを送らないでいると,債権者からの問い合わせがけっこう来ますので・・・

破産をして,免責となったら,借金の責任はどうなるのでしょうか?
このことについては,「債務者が支払ったとしても有効だが,債権者が強制執行をして取り立てることはできない」とされています。

破産した後に債権者が訴訟を提起することはできないわけではありませんが,普通はしません。
ですが,まれに訴訟を起こす債権者もいるので,その時はすぐにご相談下さい。

「支払わなくてもよいというだけで,支払ってもかまわない」ので,身内や知人には破産した後にお金を返してしまう人もいるようです。
ですが,破産をする前に,「後であなたには必ず払います」などと約束することは,絶対にやめて下さい。