自動車の名義変更

「土地を買ったのに売主が登記の手続をしてくれない。」

「自動車を買ったのに売主が名義変更をしてくれない。」

という相談は典型的なものですが,

「土 地を売ったのに,買主が登記の手続をしないので,自分名義のままになっている。」

「自動車を売ったのに,買主が名義変更してくれないので,自分名義のま まになっている。」

という相談もたまにあります。


自分の名義になったままならいいような気もしますが,不動産の名義人になっていると固定資産税の請求が来ますし,自動車の名義人になっていると自動車税の請求が来ます。
ま た,名義人であることにより,他人に対して責任を負うことがあります。

建物の名義人であれば,建物が老朽化して危険になったときに取り壊したり補修したり する責任を負う場合がありますし,自動車の名義人であれば,他人がその自動車に乗って事故を起こしたときに責任を負うおそれがあります。
そういうわけで,「今は自分が名義人だけれども,買った人に名義を引き取ってもらいたい。」という要望も実はあるのです。


不動産の登記の場合には,訴訟を起こして判決をもらうことにより,買主が協力してくれなくても法務局で買主に登記を移すことが可能です。
ですが,自動車の場合,そう簡単にはいかないようです。
自動車の所有者が自分ではなく買主だということを確認する判決をもらったり,買主は自動車の名義変更手続をせよという判決をもらっても,陸運では名義変更を受け付けないとのことです。
現実的な問題として,名義変更の際に必要な車庫証明も買主の協力なしに取り付けることはできません。
そのようなわけで,誰かに売ってしまってもう自分のものではない自動車について,買主の協力なしに買主の名義に変更するということはできないのではないかというのが,私が調べたかぎりでの結論でした。


ではどうするかというと,一つの方法としては,名義変更をしないのであれば自動車を返せという請求をすることになるかと思います。
依頼者の本来の要望からすると,不本意な方法にはなるかと思いますが,現在の自動車登録制度からするとどうしようもなさそうです。
自動車を売却する場合には,信頼できる第三者に責任をもって名義変更手続を依頼するくらいしか防衛策はないのかもしれません。